消費者金融(しょうひしゃきんゆう)とは、
消費者信用のうち、個人への
金銭の貸付け(小口
融資)のこと。
また、
貸金業業者、特に
一般の個人に対する無担保での融資事業を中心とする貸金業の業態を指すことがある。日本人の10人に1人に当たる約1300万人が利用していると言われる。
以下では特に断り書きがない限り、日本での事例について述べる。(相談については、
#サラ金・多重債務 相談窓口 を参照のこと。)
かつて消費者金融において一般的であった金利(29.2%及び29.28%)について説明する。これは、かつて
出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の上限金利であった金利であり、これを超えた貸付けを行うと刑事罰の対象となったものである(詳細は「
闇金融」の項目を参照のこと)。 例えば、100万円を出資法上限金利である
29.2%の利息で借入し一年間全く返済をしなかった場合、約
29万円の利息が生じる(出資法において定める延滞利息ないし賠償額の上限は通常利率と同率)。
消費者金融の金利は出資法の上限金利を超えることはないが、一般に
利息制限法の 基準(10万円未満20%、100万円未満18%、それ以上は15%)を超えていた。利息制限法は強行法規であり、利息制限法を超える約定利息は民事的に は無効である。従って本来は利息制限法を越える部分の金利は払う必要はなく(利息制限法の上限利率を超過する利息契約は無効)、もし支払ったのであればそ れは元金の返済に充当され、過払いが生じていれば弁護士・認定司法書士等(または本人)による交渉、訴訟によって返還させることができる(
不当利得の返還、いわゆる
過払い請求。)。ただし、完済後、10年以上経過している場合は
時効(
消滅時効) を主張される可能性が高い。相手が貸金業者で訴訟等をせずに放置されているなら、借り手の債務の消滅時効は最後の取引があった時から5年、過払い請求など の債権の消滅時効は最後の取引があった時から10年である(2009年1月22日、最高裁第一小法廷(泉徳治裁判長)は、時効は過払い金が発生した時点で はなく、取引の終了時から始まるとする判断を示し、最終的な取引(借り入れや返済)から10年以内であれば、過払い金全額の返還を求められるとした。)。 完済後も過払い請求は可能だが、債権の消滅時効が障害になることがある。
かつては、法定の契約書類・受取証書が整備され、契約者が納得の上で自主的に払っている「任意の弁済」である場合は金利の支払として有効となり、消費者は返還を求めることができないとされていた。これを
みなし弁済(
貸金業法43 条)という。しかし実際には、判例により上記要件の一つとしての受領書(18条書面)の発行が銀行振込での返済時にも要求されるなど、貸金業法43条はみ なし弁済が認められることはほとんどないと言ってよいほど厳格に解されており、また、最高裁における一連の判決によって、みなし弁済が成立する可能性はほ とんど無くなった。
弁護士・認定司法書士等が、依頼者の債務整理、具体的には「裁判所を通じた自己破産・個人民事再生・調停」や「
任意整理」(弁護士・認定司法書士等が受任し、利息制限法の金利で計算し直した残債務を一括・分割返済(3 - 5年)する債務整理方法、将来利息は原則として付かない)等を受任した際には、これを正確に利息制限法の金利で計算し直して残債務を減額させ、過払いがあれば返させる(
利息の引き直しという)。
仮に
約定利息29.2%で、約定利息分のみを返済し続けた場合、新たな貸付がないなら6年未満で債務は0となる。実際には、約定利息 分を超える返済と新たな貸付が混在していることが通常であり、正確な取引履歴に基づいた正確な引き直し計算が必要である。貸金業者が取引履歴の開示を渋る 場合もあり、過払い金を回収するための訴訟が必要となることもある(取引履歴は弁護士・認定司法書士等が代理人となって貸金業者に開示を求めることが多 い。開示を求めることは本人でも可能であり、信用情報機関に登録されることはないが、業者にマークされる可能性はある。業者による取引履歴の改竄も発覚し ており
[14][15]、注意が必要である。個人と弁護士では送付される取引履歴の書式が異なることもある。)。
過払い金=
不当利得は「法律上の原因なく」受けた利益である。不当利得であると知りながら利益を得ていた貸金業者は「
悪意の受益者」であり、受けた利益に法定利息(年利率5 - 6%)をつけて返還する必要がある。しかし、貸金業者は、過払い金があるということを知りながら、これを自発的に返そうとはしない。そのうえ、みなし弁済の要件を満たさないがゆえに
不当利得になることを知りながら返済金を受け取り、取立てを続けている。
過払い金の返還を求められる状態(不当利得返還請求が可能な状態、すなわち引き直し計算の結果、貸付残高がマイナスになっている状態)であるのに借り手が気づいていないことも多い。
この問題について、貸金業者側からは「みなし弁済の要件が厳しすぎる」との意見があるが、他方、識者からは「みなし弁済は、利息制限法に違反する無 効な弁済を「例外的に有効な弁済とみなす」として特典を与えるものであるから、厳しい基準をクリアしなければならないのは当然」「刑事罰の不存在に乗じ て、貸金業者が利息制限法を守らない貸付けをするのが悪い」という指摘も多い。29.2%という出資法上限金利(かつ、みなし弁済が認められれば収受可能 な金利)は、
英米を除く先進諸外国に比べて高すぎる、との指摘もある。また、利息制限法の上限金利を超えるが、出資法の上限金利を超えない金利を
グレーゾーン金利という。現在、この議論はみなし弁済規定が貸金業法完全施行時に廃止されることで一応の決着を見ている。
最高裁第二小法廷判決 平成16年(受)第1518号 貸金請求事件(2006年01月13日) において、利息制限法以上の金利の支払いについて、「期限の利益喪失条項」などで事実上の強制がなされた場合、みなし弁済の要件を満たしていないとされた(
シティズ判決)。続いて1月19日に最高裁第一小法廷、1月24日に最高裁第三小法廷において同様の判決があり、3つの小法廷で判断が一致した。これら一連の判決によって
みなし弁済の成立する余地はほぼなくなり、これを受けて、
金融庁は、貸金業規制法の施行規則を改正し、契約書・領収書に「期限の利益喪失条項」は利息制限法の利率を超えない範囲においてのみ効力を有すると記されることになった。この改正が、みなし弁済をめぐる法廷での争いに影響を及ぼす可能性が指摘されている。
2007年7月、大阪高裁は
「灰色金利による請求は違法な架空請求に類似する」と判断しており、札幌高裁も同様の判断を4月に出している。
2010年6月18日より改正貸金業法が完全施行され、同時に
みなし弁済制度は廃止された。
銀行や信販会社のローンカードによる
キャッシングサービスも、上記と同じ状況であるが、このうち信販会社などの
ショッピングクレジット(個品割賦)の長期回数支払で
利息制限法を超える手数料率(金利)であっても、貸金業法・利息制限法などの規制は一切受けないため(
割賦販売法が適用されるため)注意したい。
クレジットカード (日本)の場合、債務整理の際にキャッシングについて過払いがあれば、ショッピングクレジットの債務と
相殺される。
平成18年(2006年)12月13日の第165回臨時国会において、「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、12月20日に公布、段階的に施行されている
[16]。2010年の6月18日に全条文が施行された。また、この改正の最終期限をもって出資法の上限金利は年率20%となり、みなし弁済規定は廃止された
[17]。しかし、施行期間の最終期限までグレーゾーン金利が残ることについては批判がある
[18]。また、施行から2年半以内に出資法及び利息制限法に基づく金利規制のあり方について所要の見直しを行う「見直し規定」が定められている。みなし弁済規定の廃止、新規参入や融資額などの規制強化、罰則などの強化が行われる等、詳しい改正の内容については
貸金業法参照のこと。
2007年には早くも影響が現れており、優良顧客を確保するために大手消費者金融・大手商工ローンは、新規の顧客について銀行系消費者金融と同じ水準まで上限金利を引き下げ、審査を厳しくして融資先の絞込みを行った
[19]。また、多くの業者で貸し付けできる年齢の上限が70歳未満となり、既存顧客でも70歳に達していると新規の借り入れができなくなった。
「通常、貸出残高と回収実績の両方について厳しいノルマが課せられ、達成できないと支店(通常支店長一人と部下二、三人)で連帯責任を取らされる場合も多い。」
[20][21]と言われる消費者金融の業態にも変化が現れている
[22]。
大手業者については、上限金利引き下げに伴う審査の厳格化(適正化)による成約率の70%台から30%台への低下や、「ネオヤミ金」といわれる、以前の上限金利である40%程度で融資するヤミ金業者の出現
[23]、過払い請求への対応及び銀行等が融資を引き締めたことによる中堅以下の業者の倒産・廃業(
クレディア、
アエル (貸金業者)の
民事再生法申請など)などが発生している。このような場合、過払い金債権者(借り手)が過払いだということを知らないなどの理由で期日までに届け出できない場合、過払い金の請求が難しくなることがある
[24][25]。
クレディアは2008年5月22日に民事再生計画案を提出し、債権届出された過払い利息返還請求権については①40%の弁済率で一括弁済する。②30万円までの少額債権は全額弁済する。また、
債権届出ができなかった債権者も届出がなかったことによって失権することはなく、利息返還請求権が再生債権として確定すれば同様に弁済することを発表した。参照外部リンク・クレディア
再生計画の認可決定のおしらせ(クレディア)
大手系列の中小業者にも閉店・営業停止が続いている。また、廃業した業者から債権譲渡を受けた業者が一括回収に乗り出す例も報道されている
[26]。このような場合、債権譲渡、営業譲渡は過払い金の請求に対して影響がありうる
[27]。滞納された
地方税に充当するため、
地方自治体が住民の過払い金の返還を受ける権利を差し押さえるケースがある(消費者金融が返還に応じず、訴訟になることもある
[28]。)
法改正による上限金利の引き下げについては、賛成派と反対派の対立が存在した。両派には激しい意見の対立があり
[29]、反対派は全国貸金業政治連盟(全政連)などを通じて政治献金、パーティー券購入などによる政界への働きかけをおこなった
[30][31][32][33][34]。また外資系消費者金融などの意を受けた米国政府も規制緩和要望書で、グレーゾーン金利を上限とする規制改革について触れている。
引き下げ反対派の主張の例としては以下のようなものがある。
- 多重債務者を標的にするヤミ金融の増加に対しては、刑事罰の強化で対処すればよい。金利をどのように設定するかは無関係である。
- 自由経済社会において、国家が金利の上限(つまり統一価格)を決めることは問題がある。
- 金利の上限を決めることは供給を絞ることであり、供給を絞ればあぶれた需要者は破産やヤミ金融に追い込まれる。
- 消費者や個人事業主など、目的や金額の多寡も異なるのに一律に金利を定めるのは妥当でない。
- グレーゾーン金利は法的に不安定であるから解消されるべきである。しかし、経済への影響を最小限にとどめるために出資法の29.2%、またはそれに近い金利に合わせることで解消すべきだ。
引き下げ賛成派の主張の例としては以下のようなものがある。
- ヤミ金融は規制を強化すれば減少する。規制を強化しないで金利を引き上げる口実にするのは誤り。
- ヤミ金融は、出資法の上限金利が現在より高い頃にもはびこったことがある。ヤミ金融と金利の問題とは切り離して考えるべきである。
- 一律の高金利を維持することは、ローリスク層に貸し倒れリスクを転嫁している状態である。
- 「借りられない人」は新たな貸し出しを受けて借金を増やすより、債務整理に取り組むのが望ましい段階であることも多い。
- 債務整理、過払い請求をした人だけが利息制限法の恩恵を受けられる状態は不公正である。
- 緊急時の資金等は社会保障制度、セーフティーネットの充実等で公的に対応すべきである。
参考 ヤミ金融対策について、日弁連は次のような提案をしている。
- 貸金業者登録に当たって1000万円程度の営業保証金制度を導入する。
- 出資法の上限金利を超える金利での貸し付け及び無登録営業の罰則を強化する。
- ヤミ金融の契約は無効として、元本を含む、すべての債権を回収する権利を一切認めないようにする。
2007年6月12日、帝国データバンクが発表したパチンコ業者の動向調査は、パチンコ業者の5月の倒産件数は集計を開始した2005年以降、実質 的に最多の11件(負債総額147億円)に達したことについて、規制強化に対応して賭博性の高い機器を交換する費用負担と消費者金融業者が貸金業規制法改 正による上限金利引き下げを前倒しして、新規の融資を絞った影響から消費者金融からの借金が元手の顧客が減少したことが原因としている
[35]。
中小・零細企業倒産の要因の一つとして、2010年の貸金業法完全施行に先んじてノンバンク(事業者ローン、消費者金融)の一部が金利を利息制限法 に違反しないように改正し(新規顧客向けローンの金利を20%以下に設定する動きがある)、それにともない審査の厳正化(適正化)が図られ、倒産のリス ク、貸し倒れリスクの高い企業・個人に高金利で融資することが減少したことがあるとする意見がある
[36]。貸金業法改正は多重債務者救済を目的としているが、その一方で「
官製不況」の原因の一つとする意見もあり
[37]、反論もある
[38][39]。
渡辺喜美金融行革担当相(当時)はそれに対して反論している
[40]。また、引き下げ反対派は引き続き、法改正の見直しを視野に入れて同様の主張を続けている。また、金融業者の経営状態の悪化、廃業、倒産(会社更生法適用、民事再生等)、営業譲渡などは過払い金(不当利得)の返還に影響を及ぼしている
[41]。
2008年4月の時点で企業倒産が増加傾向にある
[42]。 金融業者の企業倒産も増加傾向にあるが、他業種の企業倒産も増加傾向にある。帝国データバンクは2007年度の全国企業倒産集計で原料高関連の倒産が増加 し、法改正(改正建築基準法)の影響を受け、建設、小売、サービスなど内需関連の幅広い業種で倒産が増加したとしている。消費者金融の倒産について改正貸 金業法の影響と、金融機関からの引き締めを指摘している。倒産が増加した大きな要因は、中小・零細企業の収益環境の悪化にあるとして①原料高②資材高③改 正建築基準法施行に伴う関連業界の混乱④資金調達環境をあげ、サブプライム問題で多額の損失を被った金融機関に融資の選別を強める動きがあるとする。ノン バンク(事業者ローン、消費者金融)の審査の厳正化(適正化)を中小・零細企業の倒産増加の要因にあげていない
[43][44]。 また、2004年-2008年まで、最高裁集計による自己破産申請数は一貫して減少しており、2006年-2007年に自己破産申請数の減少率は微増して いる。2008年の個人及び法人の自己破産は合計約14万件であり、2007年より約17000件減少している。個人は約12万9000件で5年連続の減 少、法人は約1万1000件で3年連続の増加となった。また、民事再生(個人向け)の申し立ては2007年に約2万7000件、2008年に約2万 4000件であり減少している
[45]。
金融庁は、消費者金融5件以上から借り入れをしている人が2008年3月末の時点で、約117万7000人となり、前年同期の約171万1000人に比して三割以上減少したとしている
[46]。2008年5月、三社以上から借りている人は378万人いる
[47]。また、自治体が多重債務者対策に取り組んでいる例もある
[48][49]。
融資先の絞込みと中小業者の倒産・廃業によって融資は縮小傾向にあるが、消費者金融大手4社の2008年3月期連結決算は引当金積み増しで赤字となった前期に比して各社とも黒字に転換している
[50]。大手4社の2009年3月期連結決算では、最終(当期)損益は武富士、プロミスは2年ぶりの赤字となった。アイフル、アコムは黒字ながら大幅減益となった
[51]。
2009年11月、政府が貸金業の規制を緩和する方向で検討しており、総量規制の妥当性、ルールの変更の影響を小さくする「激変緩和措置」の導入等について議論することが報じられた
[52]。 2009年11月12日、日弁連は、資金繰り悪化の原因は改正貸金業法施行の影響等のノンバンクの融資態度・動向では1.5%であり(中小企業の資金繰りに関する商工会議所会員へのアンケート(金融庁実施)
[53])、改正貸金業法を見直す前提事実は存在せず、「想定していなかった経済情勢」を理由として規制を緩和すると多重債務問題が再燃しかねないとして、改正貸金業法の完全施行を求める会長声明を発表した
[54]。2010年4月20日、政府は改正貸金業法の完全施行(借入総額を年収の3分の1に制限する総量規制を含む)を2010年6月18日に実施することを閣議決定した。
2010年6月18日、改正貸金業法が完全施行され、同時に出資法の上限金利は29・2%から20%に引き下げられ、みなし弁済制度は廃止された。 改正貸金業法の完全施行に伴い、過剰な貸付を防止するために「個人向け貸付け」の借入総額が、原則として年収等の3分の1までに制限される「総量規制」が 実施された。(但し個人が事業用資金として借入れる場合は原則として総量規制の対象外とされるなど例外もある。総量規制に違反した貸付けをおこなった貸金 業者は行政処分の対象となる。借り手は年収の3分の1を超える借入れがあっても、貸金業者から新規の借入れが不可能になるだけで、すぐに年収の3分の1の 額までの返済を求められるわけではない。尚、銀行による貸付けは貸金業法による総量規制の対象外である。)
日本貸金業協会が2010年1月25日に発表したアンケート調査
[55]に よると、貸金業者からの借入がある企業経営者、個人事業主の約8 割が、2006年と比較して経営環境が「厳しくなった」と回答しており、直近一年間で借入を貸金業者に申込んだ企業経営者、個人事業主のうち、「最終的に 希望どおりの金額で借入できた」と回答した割合は40%(昨年度の調査結果と比較して12ポイント減少)となっている。
貸金業法改正が多重債務者救済や、景気、GDP、地方経済に与える影響、またヤミ金融などの地下経済に与える影響については、科学的な研究が待たれる。